ここは天国

 
織田作之助の『わが町』を舞台でやると、赤井英和がTVでゆうてた。

脚本は、わかぎゑふ

ベンゲットの他あやんこと佐渡島他吉を赤井が演じるらしい。

佐渡島他吉を『無法松の一生』のような捉え方をする人もおるけど、そうではない。

それを、ちゃんと描いてくれたのは川島雄三

川島雄三監督の映画で、辰巳柳太郎佐渡島他吉役の『わが町』はよかった。

TVを見る限り赤井は、勘違い島倉千代子のような気がする。


ところで、赤井英和というと、映画『どついたるねん』はよかった。

赤井ファンは怒るかも知らんけど、この時だけはムチャクチャよかった。

後は知らん。

映画『どついたるねん』の中で、失意の中の赤井が演じる元チャンピョンが、西成の安モンの飲み屋で酔

い潰れてしまう場面がある。

その時、店の連中が流しのギターの伴奏で歌うのが「釜ケ崎人情」。

♪ここはぁ~天国 ここは天国 かまがぁ~さきぃ~♪


中学三年生の時に、大阪のサンケイホールで岡林信康を生で聴いた。

他には高石友也五つの赤い風船、ジャックス、中川五郎とか出てた。

で、岡林の「山谷ブルース」。

♪きょうの仕事はつらかったぁ~♪って、それがどないしてん!と思うた。

連れて行ってくれた人は、素晴らしい!と目がうるうるしておった。

最後に、高石友也が「インターナショナル」歌い出したら、立ち上がって一緒に歌っておった。

金払うて、聴きにきてるのに「インターナショナル」なんか歌うなと思うた十五歳であった。


それから二年後に、コーコーやめて家を出て釜ケ崎に住むことになったけど、「山谷ブルース」を口ずさ

むようなこともなかった。

けど、『釜ケ崎人情』はスッと入ってきた。


ここに、住んでた頃。

怖いもんみたさとかそんなんで、ここに入ってくるのもけっこういた。

そんなヨソ者が飛田本通商店街から横の路地に入ろうとする時、道端に座ってたオッサンがドスのきいた

声でこの歌を歌ってるという場面に出くわしたことがある。

♪ここはぁ~天国 ここは天国 かまがぁ~さきぃ~♪

商店街を外れると、いわゆるドヤが密集していた。


「山谷ブルース」はブルースではない。

閉めきったドヤの部屋の中で、死にそうに暑いから窓を開けたら、生温かい気持の悪いような風が吹いて

きたような、そんなヤヤコシさもないから。

『釜ケ崎人情』みたいに。


ほな。



<釜ケ崎人情>