ひとむかし
「十年一昔」言うらしい。
それで行くと、家の爺さんは九十歳やから「九昔」を生きてきたことになる。
ほんで、婆さんは八十三歳で「八昔」ちょい。
昔話は、「むかしむかしあるところに」ではじまる場合が多い。
これは、昔×昔=十年×十年=百年前ゆうことになるのか?
わからん?
「八昔」な婆さんは絶食五日目になる。
絶飲ではないので、氷をひとカケラあげたら喜んどった。
「九昔」の爺さんは、上の階の病棟で、飯が不味いと喚いている。
下の階の病室に、婆さんがいることを時々忘れている。
この頃は、本を読んだり、音楽聴いたりすることもない。
「宗教も哲学も芸術もみんな人間のアタマから生まれたものだと考えるとツマラなくなる」
餓死する半年くらい前に、辻潤は書いている。
そんな具合な気持ちになったりしている。
だからといって、殊更にエンセーヒカンしているわけでもない。
いつもの電車に乗らず、時々は地下鉄だったりするようなことでしかない。
さけは、相変わらず飲んだら酔う。
そんな具合に、酔っぱらえるようなのを読んだり、聴いたりしたいだけだ。
今日は暑かった。
そんだけ。