帰りしな、カッパ横丁の古本屋で何冊か買った

慎み深い若い娘のいた宝くじ特設売場で頼まれたクジを買って、帰りしなカッパ横丁の古本屋で何冊か買った。

本が読みたいなら歩いて5分も行けば図書館もあるけど、この頃は古本屋に行きたい思うことが多い。

古本屋街の最後の店でオリオン社版の辻潤全集を見つけた。

発作的に買った。全巻揃ってはいなかったけど、いや揃っていても全巻は買えなかったけども。

買った時に気がついた。

本を手元に置いておきたいという気持ちが強くなっているのだ。

10年ほども前に大きく失敗してぜ~んぶを処理した時、持ってた本も処分した。身軽になるしかないか

ら、数冊の本とPCに入れていたデータだけを残して。そっから先、本は図書館を利用するだけだった。

爺&婆も死んでもうたし、それ以外にも私の環境がずいぶんと変わってきた。


すこし風向きが変わってきたような気がする。


ところで、この最後の店って、グレゴリ青山さんの『ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記』

の舞台となった所らしい…というか、読んだらそうとしか思えん。

そんな自分の気持ちに気付いたから、さっきいった店に戻ってもう一冊買った。

ちくま日本文学全集」の折口信夫。『死者の書』が収録されているので買った。


だから<愛とセーシュン>の焼きそばは食えたけど、ビィルは飲めなかったのだ。

ようするに金欠ね。イヤン!^^;



辻潤の全集には五月書房もある。こちらの方が最新だし手に入れやすい。

けど、私はこの全集が気に入らない。

むかし、編集にPCが導入されて何社かの出版社が、入試問題なんかをデータ分析して、頻度順に問題を

編集したような参考書を出したことがあるけど、売れなかったと覚えている。

相変わらず、著者がいて編集方針のある参考書の方が売れていた。

五月書房の「辻潤全集」は、そんなデータ編集のような感じが強い気がする。

だから手に入りにくいけど、オリオン社版の全集を探しているのだ。


  「死に瀕した犬の苦悩と、勲章をつけた将軍の断末魔との間に一体どこに相違があるのかね」


そんなことを、えらい坊主が言ったのなら、みんな有難がるだろう。

しかし、辻潤がそう言った時、世間は彼を狂人扱いにした。

辻潤はたしかに「天狗」となって精神を病んでしまったけど、そうなってからも、辻潤の文章に狂人めい

た所は一切ない。

だから、彼の全集はそういったことも踏まえて編まないと駄目だと思う。




大阪の四天王寺の西門は、極楽浄土の東門に向かうとして、大阪湾に沈む夕陽を拝む信仰がある。地下鉄

の駅名が「四天王寺夕陽丘」となっているのもその名残やと覚えてる。


   極楽の東門に 向ふ難波の西の海 入り日の影も 舞ふとかや


折口信夫が『死者の書』を自ら解説した文章の冒頭に、そう書いている。

古代の人の生活や心の動きを、私は読みとれるやろか?

折口信夫は木津の生まれ。

死者の書』は青空文庫でも読むことが出来る。



そんだけ。