ローソー

 
今年の春に、四天王寺の青空古本市で福永光司訳の『荘子』を五百円で売ってた。

筑摩古典全集とか何とかの一冊。

買うたらよかったんやけど、たぶん朝日選書の方(絶版)も出回っとるやろ思うて買わなんだ。

あん時買っときゃよかったなぁ。

どこにも、おまへんがな。


老荘について、辻潤はこんな具合に書いてる。

  最後にスチルネルは仏教を研究したことがあるか?-という質問だが、恐らく多少の知識はあっ

  たかもしれないが、研究はしなかったであろう。しかし彼があのような独自の思想-殆ど彗星的

  で、東洋風のニヒリズムと相通ずる思想をどこから得て来たかは興味のある問題である。

  そして、老荘や仏教の知識のある人には、スチルネルの思想はさほど珍しくはないかも知れない。

  かえって西洋風の知識に毒されていればいる程、彼を理解することが困難であるかも知れない。

                           -辻潤『「自我経」の読者へ』


それから、『自分だけの世界』の中では、シュティルナーの「所有人」を荘子の「独有人」としても誤訳

にはならんだろうなんてことも書いてたりする。


老荘は長い間放ったらかしにしたままやった。


ずっとむかしに、「精神世界」なんてわかったようなわからんような流行があって、カクメーが見えんよ

うになったら、急にカミが見えたりする、都合のいい人が私のまわりにぎょうさんおった。

インドまで行ってラジニーシから名前もうて喜んでころこんでたアホ友達もおる。

そんなんがローソー、ローソーと急に言い出したんで、気持ち悪いから避けてきたのだ。


口拭うて、立ち位置かえて生きるんが好かんかったから、アホの一念でそれでも自称カクメー家やっとっ

たです。やめたけどね。


老荘を読み出したのは五十を過ぎてから。

カレーやないけど、しばらく寝かせといたほうが美味なるもんもあるなぁ。


シュティルナーの『唯一者とその所有』も、日本で知られ出した頃はカクメーに幻滅した人の拠り所にな

ったような節がある。

『唯一者とその所有』を完訳し出版した辻潤には、そういうのはなかった。

そやから、私は辻潤に惹かれたのやろ思う。

その辺りは、辻潤が『自分だけの世界』に書いてる。


ところで、桃白歩実さんに【えごいすとな思想】というのがあります。

最近ちょこちょこ読ませてもうてます。

標準語が近代日本の言葉なら、微かに生き残ってる方言で抽象を書くのは凄いなぁ思います。

まずは老子大阪弁訳を読んでみてもうたらうれしいです。

●えごいすとな思想→http://home.att.ne.jp/wave/ayumi/



ほな。


辻潤の『自分だけの世界』は青空文庫で読むことが出来ます。
 →http://www.aozora.gr.jp/cards/000159/files/853_15049.html