もすりん橋を今日は二人で渡ろうよ
いろいろあるやろけど、私には、藤田まこと=「十三の夜」。
「てなもんや三度笠」で一気に駆けあがったけど、そこから落ち目の三度笠。
「必殺」で、もう一回浮上するまでの間、キャバレーまわりでしのいでた時期に作られた歌。
作詞、作曲も藤田まこととある。
十三はキャバレーの街だったし、家のオトンも、そんな十三のキャバレーで料理作ってたから、この頃の
ホステスさんやキャバレーまわりの歌手の昼間の顔はぎょうさん見てきた。
夜はキンキラキンで、昼はただただ汚いような盛り場ばっかりになってきたけど、この頃の十三の昼の盛
り場はモノトーンのような感じやった。
歌詞の三番目の「もすりん橋を 今日は二人で渡ろうよ」は、キャバレーまわりをしててこその歌詞。
十三自体は工場街やない。
十三は、そこから工場に行くために出発点のような街。
各地から来た人は、淀川を渡って梅田に行くことは少なかったと思う。
十三こそが都会というような感じ。
そやから、神崎川を渡るは、同じ境遇の二人が連れ添って渡る橋。
渡った先は、十三よりはるかに煌めいていた梅田ではなくて、自分たちのはじまりであった街。
そんな人の心根を、指の間から落ちこぼれた砂のような気持ちを藤田まことはすくい上げてる気もする。
音源だけあったのでよかったら。
「生きているということは、ほかの人の死ぬのを知ることなのだとさえ思うのである」
深沢七郎は『流浪の手記』で、そんな事を書いてるけど、ほんまになぁ。
ほな。