コキュの嘆き

辻潤とM・シュティルナーには共通点がけっこうある。

辻は父が狂人となり、シュティルナーは母がそうなっている。

ともに、没落で苦学し、女学校の教師となっている。

そして、女生徒に人気があったそうだ。

この頃が二人にとって実生活的には安定していた。

辻潤は『唯一者とその所有』を訳した時期と重なり、伊藤野枝と出会う時でもある。

シュティルナーは『唯一者とその所有』を出版。資産家の娘、マリーン・デーンハルトと結婚している。

その後は、二人とも女学校を辞め、波乱というより、混乱の人生となっていく。

シュティルナーは、なぜか牛乳屋を開業し失敗。無一文となり、嫁に捨てられる。

辻は、伊藤野枝に去られ「えい・しゃく・ばい」の看板で私塾を開く。浮浪人生の幕開け。

・・・「えい・しゃく・ばい」は英語・尺八・バイオリン。英・尺を辻が担当。

シュティルナーは寝取られてはいないので、コキュは不適当だけど、両方とも、その後劇的に人生が変わ

る結婚相手だったのは間違いない。



家庭生活をなんてものをやらざるを得なくなって、安モンの出版社に潜り込む。

毎日々ネクタイで自分を絞め殺し、お手て振り振り、あっちこっち丁稚

遅まきの社会人生活を始めた矢先の話。80年代の前半。

実は、私も寝取られたりしている。

それで、辻の贔屓になったのではないけど。

伊藤野枝の著作にはほとんど手を出さなかったのは事実です。

はい。