工事現場

家の近くで工事が続いている。

今朝、家人のリハビリに付き添い工事現場の横を通った。

頭らしい男が、その日の段取りと注意を力のこもらない声で投げかけている。



「西陽あびる 金魚鉢の中の金魚のように ひと言もなく生き延びる」



自らの詩集にそう書いた人は、その通り生活の中に突入していった。


おととしの賀状。


「交通警備の仕事に就きます。以後のやり取りは無用に願います」・・・とあった。


それから警備の人を見るたびに、その人のことが浮かぶ。


現場の整列。


整列の中うつむいたたまま、人は連帯でなく孤立の中にある。


その人はもう言葉を紡ぐことはないのだろうか?


  しののめの よるのうみにて
 
      汽笛鳴る。
     
         こころよ 起きよ 目を醒ませ。
                               中原中也
 
  

この詩を教えてくれた人ではないか。