読んだ本の短い感想 四連発

●『秋に墓標を』大沢在昌

結局、大沢の本って、中年のおっさん、ゼンキョートー世代の情けないオヤジのためのハーレクイン・ロ

マンスという気がする。その意味ではよう出来てるかも。



●『博奕好き』高橋順子

詩人で車谷長吉の嫁はん。五十歳近くなってからの結婚、車谷の直木賞受賞あたりを書いたエッセイ。

<読む>。私が読書に求めるものは、なにかしらの手ざわりであるらしい。本を読んで詩が書けるわけで

はないが、一人で考えてゆく勇気を与えられる本はあるものだ。

<書く>。私どもは書くことで生計を立てていくことは出来ないのだが、書くことはいちばんの関心事で

ありつづけている。

なんて事が書いてあったりする。



●『金輪際』車谷長吉

直木賞赤目四十八瀧心中未遂」受賞後の作品です。

「あなたの小説は読むだけで気がめいる小説」と作品中の台詞にあるが、気が滅入るというのが、作品を

読んでいる私が、胸が詰まる、頭が静かになる、いろんな欲望を殺ぎ落とされて私と向き合えるような状

態が生まれる…こういう状態を気が滅入るというなら、そういうのは悪くない。



●『メアリー・アニングの冒険-恐竜学をひらいた女化石屋』吉川惣司・矢島道子

英語でもっとも有名な早口言葉(tongue twister)である「She sells seashells by the seashore.」の

モデルになった、イギリスの有名な化石採集者メアリー・アニング。

本国でも、これほどまとまった評伝はないらしい。

イギリスで地質学が急速に発展していった背景としての産業革命=石炭の発掘。そういう時代に指名され

た人、メアリー・アニング。こういう描き方は本書には無い。

時代に選ばれた人間というのは確かにいる。

アニングの生を時系列に整理し、周辺人物やエピソードを集め、データをまとめ上げる。そういう作り方

しか見えない。それは資料的価値というもの。

かって、こういう人がいたというなら、そういう人はいくらでもいる。

なぜ、アミングなのか?がいっこうに見えない。アニングの全てが並列で書かれているだけ。

生まれてから死ぬまで。出来事を時系列で並べて、こんなんでしたって、そりゃ安モンの自費出版の自叙

伝ということでしかない。

メアリー・アニングの存在は確かに興味あるものだから…。


そんなんです。