三年前に読んだ本ともっと前に読んだ本

PC内のメモから・・・。


<三年前に読んだ本>


山本夏彦 『 誰か「戦前」を知らないかー夏彦迷惑問答 』(文春新書)。

満州事変から敗戦までの期間=天皇制→軍を軸にした統制社会=暗黒というのは戦後民主主義教育の一般

イメージ。丁度、封建時代=お代官さまぁ~のイメージと同じ。

「昔はよかった」と「昔はひどかった」の二極。

例えば、『戦下のレピシ』で斎藤美奈子が結論するように、食で苦労した記憶は、いま食える事への感謝

の強制か、むかし食えなかった事への記憶と感謝の強制に一般的には落ち着く。

しかし、戦時下の食での苦労を、それなら二度とそうならないようにしようという、前方向の結論は出て

こない。「今」を単純に了承し、今がいちばんの前提から過去をみるからそうなるということ。

なぜ今があるかから溯って行ってこそ歴史は理解可能であり、人類の発生から今に至る教え方は、「なぜ

今」でなく「だから今」という問い無し歴史観しか生まない。

で、戦時下の日本のフツーの人たちは決して暗黒の社会で生きてきたわけでもない。

山本夏彦はそれを語る。


自分のしてきたことを、目の前に置いて生きていくということと、「それは歴史や」、「一応済んだこと

や」とする生き方とでは違ってくるように思う。

その経験をきちんと捉えていたら、自分のことを大事にするように、相手のことも大事にする。

人はどうなってもいいんやというふうにはならないと思うたりする...なんて思うたりした。



<もっと前に読んだ本>


山本夏彦 『 美しければすべてよし 』(新潮社)。

辻潤が出てくる。こんな具合、以下引用・・・。


荷風はウソつきでケチで助平でつめたくて、自分のことを棚にあげ舌鋒するどく他人を難じるときは常

に自分でも信じていない儒教を借りてつめよった。

昭和二年改造社は一冊一円の「現代日本文学全集」の大広告をした。いわゆる円本である。当然「荷風

集」ははいっている。無断でなぜいれた。自分は許してない、本は大量生産して大量販売していいもので

はないと延々三回にわたって新聞紙上で改造社のやり口を非難して、荷風集は出させないと大見得を切っ

た。ところが全集は大成功で三十なん万部も出た。印税一割とすれば三万なん千円の収入になる。当時の

三万円はその利子だけで一生くらせる大金だから、今のなん億円に当たるか分からない。

荷風は手のうら返して改造社の円本に参加して、その金でカフエライオン、カフエタイガーなどの客にな

って連日女あさりをした。

一日銀座街頭で辻潤に袖をとらえられ、今後はきれいな口をきくなと言われたという。

辻潤は今は忘れられたがあり余る才能を発揮できぬままに死んだ文士である。辻まことの父である。全集

八巻がある。


引用終わり。

最後、辻潤をさらっと紹介する辺りに山本夏彦の気持ちを感じた。

山本夏彦は、武林無想庵の娘イヴォンヌを辻まことと争った男でもある。


で、この後山本夏彦荷風を絶賛するのだけども。


そんなんでした。