見届け人(その一)

 
数年前の事

親から家に戻って何かとやってくれと言われ

そうした


やや頭が不自由になったオトン

かなり体が不自由になったオカン

体丸ごと不自由となった兄やん

体は大丈夫だが金銭が不自由となった私

四人での暮らしが始まった

あと離れて堅気な暮らしをしている姉やんがいる


以前はずいぶんと関係が希薄な家族だった

原因は当たり前の様に貧乏

みんな家を捨てようとしていた

そこからこぼれていきたかった


そんな親兄弟が世間での勝負に負けて身を寄せ合うようになったわけだ


そうか!お前はそうやったんか!


親兄弟というよりここまでを生き延びてきた人間としての会話をした


そんな中いちばん若い私が見届け人に指名され


そうすることにした


私は相変わらずブンガク的な何かを作る力もないから事実と思っていることを書くしかない



つまり人の生き死にをいまだに私的な事柄としてしか書けないと言う意味だけども





見届け人の仕事を一つ終えた



十月一日午前三時四十一分



オカンは消えた






   もともと無理やりつれだされた世界なんだ、


   生きて悩みのほか得るところ何があったか?


   今は、何のために来り住みそして去るのやら


   わかりもしないで、しぶしぶ世をさるのだ! 
  
                       (オマル・ハイヤーム







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そんだけ。