雨や…酒屋はまだ来ん

 
雨が強くなってきた。

酒屋がけえへんから酒も飲めん。


私は貧乏である・・・伊東静雄はそう板書して生徒に文法を教えていたらしい。

大阪の住吉高校での話。

旧制住吉中学の頃、その時の教え子に庄野潤三がいた。

そして庄野潤三は九大時代に島尾敏雄を知る。



(行って お前のその憂愁の深さのほどに 明るくかしこを彩れ)と



吉本隆明は、伊東静雄の詩の一節を引いて、「その憂愁の深さのほどに」を島尾敏雄が、「明るくかしこ

を彩れ」を庄野潤三が受け持ったと書いた。

この話は四回目になる。いや五回目か、まぁどっちゃでもええけど。

とにかく、わたしもこの一節が好きなのだ。


若い頃の一時期、新潮社文庫の『伊東静雄詩集』と現代教養文庫の『苛烈な夢 伊東静雄の詩の世界と生

涯』を、いっつも持ち歩いていたことがある。

伊東静雄をして「苛烈な夢」はその通りや思うた。

林富士馬と富士正晴による一冊。

『苛烈な夢』は、好きな書名だ。あと、中島らもの『頭の中がカユいんだ』も。

他にもあるけど、きりがないからやめとく。


酒屋が来るまでを伊東静雄のサイトでいいのが見つかったので、しばらく読んでいた。


生きるに何の目的も使命感もない。

ただ、「ほな、それ俺が引き受けるわ」というのはある。

そんなんでええのや思うてる。


酒屋はまだ来ん。



そんだけ。



●行って お前のその憂愁の深さほどに→http://www.nextftp.com/y_misa/ito/aika17.html