夢を食わされる

 
「んなら、胸悪るなるほどタコ焼き食べよか!」

ずいぶんと昔の話。神戸のアホ友達と昼に何を食うかやりとりがあって、そういうことになった。

お陰でホンマに胸悪るなって、昼からの仕事は・・・ないことにした。


小さい頃、大きくなったら嫌になるほど食うたんねん!と決意した食いもんは何個かある。

商店街入り口の肉屋のコロッケ。スティーヴン・セガールの娘も好きやったらしい。

あと、玉一の冷やしウドンとビクトリアのグラタン。店の名前とセットになった記憶です。

すき焼の牛の脂身。時々、人からゲェ言われる。

バッテラ。バッテラであって鯖寿司ではない。薄いセロファンのような昆布と、私が付いてないとバッテラじゃないで

すからと申し訳程度ににへばりついているしめ鯖。そんなやつね。

だいたいそんなとこ。


ところで、芥川龍之介

痩身、長髪&前髪タラリが作家のイメージとなってしまった原因のような人。

そんな、芥川龍之介の『芋粥』。

 此処へ来ない前の彼自身を、なつかしく、心の中でふり返つた。それは、多くの侍たちに愚弄され

 てゐる彼である。

 京童(きやうわらべ)にさへ「何ぢや。この鼻赤めが」と、罵られてゐる彼である。色のさめた水

 干に、指貫(さしぬき)をつけて、飼主のない尨犬(むくいぬ)のやうに、朱雀大路をうろついて

 歩く、憐む可き、孤独な彼である。しかし、同時に又、芋粥に飽きたいと云ふ慾望を、唯一人大事

 に守つてゐた、幸福な彼である。

これが話の終わりの文章。


芋粥』は中学の教科書にあった覚えがある。『芋粥』というと、食いたかったものを食いすぎて幻滅する?

そんな話と思っている人が時々おったりする。


これは、夢を食い過ぎた男の話でなく、夢を無理矢理食わされた男の話やなぁ。



ところで芋粥

 芋粥とは山の芋を中に切込んで、それを甘葛(あまづら)の汁で煮た、粥の事を云ふのである。当

 時はこれが、無上の佳味として、上は万乗(ばんじよう)の君の食膳にさへ、上せられた。

  従つて、吾五位の如き人間の口へは、年に一度、臨時の客の折にしか、はいらない。

こんな具合に『芋粥』には書いてある。

甘葛は甘味料のようなので、この芋粥、お菓子みたいなもんやったかも知らんなぁ。

サツマイモの芋粥が頭の中にへばりついている人は、引っ剥がしてから読んで下さい。

芋粥』は「青空文庫」で読むことが出来ます。



ほな。