暗がりの弁当
耳の穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわしたろか!
そんな台詞もあったけど、ほんまに朝一から、奥歯ガタガタいわされた。耳の穴からやないけど。
歯医者は辛いなぁ。
優しくしてネ!と可愛くお願いしてみたけんやけどなぁ。
歯医者が済んでから、図書館に寄ってきた。
が届いてたのだ。
岩本素白は、読もう思うてた最中に爺さんが死んでもうたんで読んでなかったもん。
誌』と山本周五郎の『現代小説集』を借りてくる。
ゆうても、歩いて5分で図書館やから、毎日でも行ける。
・・・歩いて5分は不動産チラシ的に理解してください。はい。
佐野洋子という人の書名の付け方がごっつい好きでして。
いっちゃん新しいのが『役に立たない日々』それから『神も仏もありませぬ』、『友だちは無駄であ
る』、『あれも嫌いこれも好き』、『覚えていない』・・・ええなぁ。
山本周五郎は、誰かが「ちょんまげ結うてる現代小説」と書いてるのを目にしてふ~ん思うたのと、嵐山
光三朗の『文人悪食』の中の話しがずっと頭に残ってて、何かと適当に読も思うた。
それは映画を観るというより、ただ暗がりでぼんやりしていたいというだけのことだけど。
昼頃の館内で、映画が始まるとすぐに、カバンの中からそっと弁当を出し、周囲をはばかるよう に、音をひそめて食べる人がある。大概きちんとした背広にオーバー、中折帽という格好で、年 は四十四、五から五十がらみの人が多い。・・・館内が暗くなるのを待って、ひそかに弁当をひ らくこれら中年の紳士たちを見ると、やはり私は胸が痛くなる・・・どうやら、私自身が、これ からもこれからも、ずっと、暗がりで弁当を食べる人間だからである。 -山本周五郎「昼下がりの弁当」より
エッセイ『暗がりの弁当』には、こんな事が書いてあった。
そんだけ。