対 話

 
高木護の『忍術考』を読み終わる。


辻潤贔屓の高木さんだけど、高木さんもブラブラの最中、忍術使いになれるような気がして路上で飛び上

がり、下の畑に落ちたと書いてあった。

なんとのうわかる気がする。


高木護さんが、辻潤は乞食にはなれないと言い切ってることが、私の中でもの凄く大きくなっている。

しばらく、高木護さんを読んでみようと思う。

ブンガクやゲージュツのことは相変わらずサッパリわからん。

しかし、高木護や辻潤的なものと対話をしていくには、それなりの心づもりが必要だろうとは思う。

それは、自分の中に禁忌を作らないことであり、人間社会の約束事すべてを拒否することであり、拒否し

たなら最後の最後まで拒否し続けること。

そんなとこやないかと思う。


大丈夫か?お前。



  <対話>

    人間の話し相手は人間だろうと思っていた

    ところが

    話し相手を探してみて

    そうではないのが判ってきた

    年老いてくると判ってくるのだ

    人間だからしゃべる人間語さえおたがいに通じ合わなくなってくるのだ

    たとえば

    恵まれた人とそうでない人とは

    学問のある人とそうでない人とは

    えらい人とそうでない人とは

    それにまた政治と庶民とでは人間同士ではないか

    いくらおたがいに人間らしくやろうと泣きついても通じ合わないどころか珍紛漢で

    話にもならないのだ

    そこで

    そうでない者の一人として

    わたしは年老いた日から

    木に話しかけたり

    石ころに話しかけたり

    天に話しかけたりして

    彼らとわたしとだけに通じる言葉を見つけるのだ

    どんな言葉かって?

    人間語でしゃべれるものか

                                 -高木護「対話」