アパート
二階の四畳半一間。風呂なし、トイレと炊事共同で駅から歩いて15分。
1ヶ月16000円。
目の前が公園で、夏の夜は悪ガキ、昼は幼稚園児のお遊戯場所になる。
やかましい。
そんなアパートを借りたのが2001年の秋。
それまではF元君の事務所で二食&酒付きでほぼ2年間居候。
F元君はなんてことなかっけど、嫁ハンが「あの貧乏神、いい加減に追い出せ!」となって出た。
必殺「連帯保証人」攻撃で、個人商店に毛の生えたような事務所を潰してスッカラカンならまだしも、い
らん借金まで背負って藻掻いてた頃であります。
結局、同じ仕事で再起するのもメンドーになったので、アパートを借りて夜勤仕事はじめた。
私は、何かとメンドーになると、夜勤の肉体ロードーという妙な癖が昔からあったりします。
そのうちに、実家から見届け人要請があったので2003年の春、家に戻ったけど、アパートは借りたままに
していた。今はちょっとした商品の倉庫になってる。
で、そのアパートを今日は解約してきた。
私が入居した時は8部屋中、プロの酒飲みのSさんと、水飲み男Yさんしか住んでなかった。
Sさんは酒好きだ。毎朝夜勤帰りに目の前の公園で缶ビールを美味しそうに飲みながら、こっちにむかっ
て「お疲れ」と声をかけてくれる。
Sさんは缶ビール一本でも人の奢りで飲むことはない。自分で買った酒だけを飲む。金がなければ飲まな
いでいる。だから、プロの酒飲みなのだ。
水飲み男のYさんは、パチンコ好きだ。稼いだ分だけつぎ込んでた。だから金がなくなると、二階からヨ
タヨタしながら降りてきて、水ばっかり飲んでた。
Yさんは、おととし自分の部屋で死んでるのを大家が見つけた。
SさんもYさんも、酒やったりパチンコやったりが好きな人だけど、無欲な人だ。
今日、解約の話をしに行って驚いた。
そんなアパートが満室なのだ。私が出ても次の希望が入っているとゆうてた。
みなさん、訳ありな人ばかりらしく、世話好きの大家は逆に楽しそうであった。
ここが満室になるということは、世間の暮らし向きがますます悪くなってるのだろう。
そういう私も、もはや肉体ロードーの出来る体ではなくなってしまった。
それが少しさびしい。
そんだけ。