半人前で一人前

 
朝から具合が悪いのやけど、思い当たるのは飲み過ぎしかない。


「ええか、株の話しすなよ。マスター、落ちこんどるからなぁ」

きのう、店に入る前にF元君は私にそう言った。

けど、入るなり「マスター、今日も下がっとるなぁ。ガハハ…」

F元君よ、お前がゆうとるやないか!


ときどきF元君のノーミソ、どんな具合かみてみたい思うことがある。


この店に来るのも一年ぶりくらいになる。

一人前が世間の二人前ほどの量があるけど、値段は一人前の値段。

小さく作るのがじゃまくさいとマスターは言う。

そんなんで、常連は「刺身盛り合せ半人前!」と注文するから結果は同じやけど。


店の壁に、見たことあるような、ないようなアイドル風のオネイサンの写真が飾ってある。

はじめての客は「この人だれ?」とマスターに必ずきくけど、マスターはニヤニヤしとる。

嫁ハンなのだ。

脅したか?騙したか?は、よう知らん。


とりあえず飲み過ぎた。

昨日、天神橋筋商店街の古本屋で『足立巻一詩集』を買った。

二百円。

足立巻一は『やちまた』と『立川文庫の英雄たち』を思い出すけど、詩も書いてたとは知らなかった。

まだ読んでない。

『やちまた』はすごかった。


そんだけ。