こいてる

 
世間が、祭りだろうと戦争だろうと、こっちはこっちの都合で生きとるんで、とりあえずは鍋。

世間が、こっちの都合もきいてくれとする場合もあるけど、それはそれで折り合いつけるしかない。

折り合いつけへん時、どないするかは、その時に考える。


作る鍋は、寄せ鍋という何でも入れることの出来る便利な名前の鍋。

ビョーキ男のご機嫌は良かったり悪かったりするが、これも良かったり悪かったりするのがフツーやろか

ら、それはそれでええとしている。

一人用の鍋で、出来上がってからも固形燃料で温める安モンの飲み屋にあるようなやつ。

これを、オッサン二人で勝手にボソボソとつつき、湯割りを呑む。

あんまり会話はないけど、二人で食ってることで十分とも言える。


きのう、ビョーキ男が鍋の蓋を開けたときにぬかしよった。


おい、鍋が屁こいてるし、もういけるで。


そうか、ほな食うか。


この、鍋が屁をこいてるはオトンの口癖でもある。


それがアホ息子たちにもうつったのだ。


オカンは言わない。



そんだけ。



 日本は実に驚くべき国だ…偉大な国だーだれもチップを受け取ろうとしない。失業者もいない。

 …人々は礼儀正しく教養がある…だがモスクワにいるような虚ろな群衆は、そこにはいない。

                               『タルコフスキー日記』1971.10.23