チ ロ リ

イメージ 1



 大阪城から、南へ、上本町、阿倍野という方面にかけましては、なだらかな丘になっております。

 大昔は、この辺りだけが、陸地で、今の船場、島之内、千日前、などの一帯から、西の方は海でご

 ざいまして・・・

                         -林芙美子『めし』より


林芙美子『めし』朝日新聞の連載小説として発表された。

大阪が舞台で、帝塚山、宗右衛門町、新世界のジャンジャン横丁天下茶屋、天神の森といろんな所が細

かく描かれている。

内容の云々は別として、ある時代の大阪の観光ガイドとしてもオモロイ本のような気がする。


しかし『めし』は未完に終わった。

昭和26年(1951)の今日、6月28日に林芙美子は急逝。

林芙美子の死後、東宝はわずか5ヶ月で『めし』を映画化し、大ヒットとなる。

監督は成瀬巳喜男原節子島崎雪子主演。

これ観たような観てないような・・・。


画像は、道頓堀名物「くいだおれ」が『めし』上映とタイアップした時のもの。

くいだおれ」創業者の山田六郎氏が、林芙美子に店を宣伝してもらったお返しにと企画したらしい。

画像は『ばかたれ、しっかりせ』(柿木央久)からのもの。


林芙美子は、来阪時には「くいだおれ」に通い、酒場のカウンターで原稿用紙をひろげてたそうだ。

      初之輔はくいだおれの店に入った。

      酒と食い物のマーケットのようで、

      両側のそれぞれの店から初之輔を呼んだ。

      初之輔は一番奥の馬蹄型のカウンターに行き、

      腰をかけた。
 
      レインコートをぬぎながら酒を注文した。

      赤前だれの女が、

      目の前に汽車のように並んだ銅壺へ

      錫のチロリを入れて、かんをしてくれている

                     -林芙美子『めし』より

前にも書いたけど チ ロ リ って知らん人が多なったなぁ。


林芙美子というと、絶望しながら欲望全開のようなイメージがある。


ほな。