海 族

 
商店街に、持ち帰り寿司のチェーン店がある。

先だってから気になっているのだけど、この店で「海族ちらし」というのが売り出されている。

買ったことはない。


これ「海鮮ちらし」では普通すぎるので、「海賊ちらし」にしたけど、何がなんやらで、い

つのまにか、にっちもさっちも、どうにもこうにも「海族ちらし」になってもうたんやろか?

そういえば、家に入る折り込みチラシも「海族ちらし」になってた。


何だかなぁ…阿藤快のように呟きながら商店街を抜けた。


今日は雨。

帰り道、マンションのベランダに濡れたままの洗濯物。


     濡縁におき忘れた下駄に雨が降ってるやうな


     どうせ濡れだしたものならもっと濡らしておいてやれと言うやうな


     そんな具合に僕の五十年も暮れようとしてゐた。

                             -木山捷平『五十年』



木山捷平の詩を思い出したけど、ん?もう五十年はとっくに過ぎてしもうてるがな。

ありゃ!


何だかなぁ…


…と呟きながら角を曲がって曲がって、さらに曲がって曲がって家に帰ってビィルを開けた。



そんだけ。