千六本の大根と浅蜊

 とっぷりと暮れてから、梅安と彦次郎は、居間の長火鉢へ土鍋をかけ、これに出汁を張った。

 笊に、大根を千六本に刻んだのを山盛りにし、別の笊には浅蜊の剥き身が入っている。

 鍋の出汁が煮えてくると、梅安は大根の千六本を手づかみで入れ、浅蜊も入れた。
 
 刻んだ大根は、すぐさま煮えあがる。それを浅蜊とともに引き上げて小皿へとり、七色蕃椒を振っ

 て、二人とも汁といっしょにふうふういいながら口へはこんだ。

                             -池波正太郎『梅安晦日蕎麦』


先だってからバタバタしてた時に、天神橋筋商店街の古本屋で、池波正太郎の「梅安」と「鬼平」の文庫

を適当に買って合間に読んでた。

この所、食ってないわけでもないけど、一人暮らしでエエ加減なもんばかり食うてるので、少し落ち着い

た所で、池波正太郎の本に出てくる食いモン、以前から美味そうと思うてたので試してみたりしてる。

とは言うても、食材的には上のあるようなもん。

大根、浅蜊とか葱とか薄揚げとかそんなん。


上のもやってみたけど、小説に出てくるような美味さにはほど遠かった。

ガツンと化学調味料の効いた出汁使こうて、スーパーの安モンの食材やったからか?

そもそも作り方に問題があんのか?

まぁ、そんなとこやろ。

けど、大根や浅蜊の力が昔と今とでは違うんやろとは思う。

とりあえず湯割りは美味かった。


今日、読み終わった『鬼平犯科帳24/特別長編 誘拐』は「作者逝去のため未完」となっていた。

調べたら、1990年(平成2年)5月3日のことで梅安シリーズの『梅安冬時雨』も同じ理由で未完らしい。



ほな。