歌はどこに行ったんや?

 
以下は、こないだ五百円で買うことができた、千田梅二『炭坑仕事唄版画巻』の後書きからの引用です。


 炭坑仕事唄はたしかに、石炭を掘り出すという生産に密着して生まれ、歌われていましたが、労働

 条件の変革は、現在の炭坑では仕事をしながら歌をうたっていたのでは、仕事にならないどころか

 逆に生命を失ってしまうかもしれません。これが近代労働の一般形態だといってもよいでしょう。

 機械の騒音は、精神の緊張は、仕事の増量は、歌どころではなくなったのです。


 我々炭鉱労働者の祖父、祖母たちが心の底から歌いだしたその美しさ豊かさが、かってはその人達

 の仕事をいろどり、その人たちの生活を守り、その人たちに生きる勇気さえ与えていたものがだん

 だん亡びていくのを感ずる時、過去の美しかったものにたいする我々の郷愁は、あまりにもいたま

 しく、我々の胸をえぐるではありませんか。



ほな。