レ シ ピ

 
オトンの使ってたノート、メモの類。読むつもりはないけど、まだ捨ててはおらん。

いろんな形のノートやメモに多く残っているのはレシピ。

テレビや新聞や雑誌を見てレシピをメモしたものが大量に残ってる。

というても、仰々しい料理は全然ないけど。


オトンが料理人になったのは四十に近くなってからのこと。

戦前は呉服商をやってたらしいけど、戦後は何かと失敗続きで落ち目の三度笠状態の時に、フンギャ~と

生まれたのが私。

九条の饂飩屋の小倅やったし、飲み屋なんぞもやってたので、料理場に馴染みはあったんやろ思う。

それと、本人が料理好きやった。

死んでから十歳以上も年が若い、オトンの師匠が家に来てくれたけど、その時の話では年取ってからの仕

事やったから、若い奴以上にシバカレタらしい。

しつこく、ほんまに料理が好きやったんやろ思う。

そやから、仕事やめてもからも料理と買い出しはオトンがやって、その他の家事はオカンというタッグで

暮してきた。

オトンが料理人やり出してから、家の暮らし向きも上向いてはきた。けど、世間の勢いに乗り遅れてるか

ら、同級生と比べると、相変わらず一周遅れのような暮らしやったけど。

いや、二周半くらい遅れてたなぁ。


アホ友達に、作る手際も出来映えも味も、「お前、料理の天才か!」と言いたくなるようなのがおる。

オトンの料理は、そんなんはない。

量も時間もきちんとレシピ通りにつくる。

そんなオトンの料理は、うまい!というより一生懸命な味がした。


そんだけ。