『辻まことマジック』

 
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 琴海倫さんの『辻まことマジック』(出版・未知谷)を再読した。

 最初に読んだ時は、よっしゃぁ!西木正明の『夢幻の山脈』を蹴飛ばすよ
 
 うなんが出たぞ!と思うた。
 
 例えば、伊藤ルイさんの手記『海の歌う日―大杉栄伊藤野枝へ--ルイ
 
 ズより 』は、伊藤ルイさんが、父と母ということでなく、伊藤野枝大杉栄
 
 に出会うまでが書かれている。
 
 ほんでも、『夢幻の山脈』での、伊藤野枝辻まことは、手垢のついたよう 
 な母と子の中で理解してるんで、それちゃうやんと思うてたから。
 
 
辻まことマジック』は、B六で二百頁ほどやけど、辻潤矢内原伊作等々辻まこと周辺の人々や出来事も、やた
 
らと多い注釈などなしに、簡潔に書かれている。
 
それと、辻まことの子であるナオさんとの会話に、辻潤伊藤野枝が入籍はしてなかったといった、知らなかった
 
事柄も出てくる。
 
けど、この本の魅力は琴海倫さんが、辻まことと長く対話し続けたからこその一冊からと思うた。
 
この本で伊藤野枝伊藤野枝として登場する。
 
よく辻潤は、大杉栄伊藤野枝の話に出てくる刺身のつま扱いが多いんで、なんでやねん!と思うこともあるけ
 
ど、伊藤野枝もおんなじような扱いが多いのだ。
 
 
良し悪しで論じる富裕層と、生きることを優先させなければならない貧困層とでは考え方が違っていた。貧困を実
 
感としてもちながらの意見には当然力が入る。野枝には、自分が言わなければ、他にいう人がいないという悲壮
 
感もあったのだろう。言わなければ実感のない人には、気がつきもしないことだった。P.121
 
 
辻まことマジック』で、辻潤について書かれている部分を引いて終わります。
 
 
辻潤の考え方は、わかりやすく、他のどんな考え方に触れても、私は私という考え方を支えてくれる。P.90
 
 
辻潤は、自分がどうあれば生きやすいのか、そのようにしたら、どういうことが自分の身に起こるのか、それを、
 
自分の体と心を使って確かめた。それは自分との闘いであるばかりか、世間との闘いでもあり、その苦しみか
 
ら、狂うこともしばしばで、それすら、辻潤は狂人のふりをしているだけだと言われ、しだいに相手にする人も少な
 
くなっていった。それでもそうすることをやめず、得た感触を文章にした。P.92
 
 
 
辻潤を読むと、辻まことは、俄然面白くなる。
 
辻潤の美は思想にある。
 
ナオとの一致した見方だ。辻潤の考え方というのはわかりやすい。その考えに行き着くと、毅然として、ゆったりと
 
胸をはれるような気になる。思想的にはほれぼれする。P.10
 
 
 
ん?
 
辻まことのこといっこも書いてへんがな。
 
それについては、またの機会に。
 
とりあえず、古本屋で買うた『洟をたらした神』を、また読んだろ。
 
 
ほな。