最も売れた作品 『老子』 ― 即席の黒石⑤
辻潤の「いっさいは生きてる上の話だ(にひるの泡)」と通じるような気がする。
ば、『老子』は黒石の中で最も世間的な成功を収めた作品らしい。80、100版を重ねたという話もある。
しかし、文壇は黒石を<大衆作家>としており一切の評価をしなかった。
ひどいのになると、読む意味も無いとして、読みもせず評論を書くなんてのもあったらしい。今でもあり
そうな話だけど。
黒石が「文壇、爆弾、青年団とおよそダンのつくものにロクなものはない」と書く気持ちもわかる。
しかし、文壇ぶら下がりよりも、官憲の方が鋭く、黒石にの著書の中でも珍しく伏字の多い作品になった
そうだ。
のニヒリズムから肉付けした黒石の創作も危険視されざるを得なかった。
と、また全編に頻出する水のイメージは老子の核心に触れているとする。
一つはトルストイからのもの。
もう一つは、路加伝からのもの。
それぞれに、書き写しておく。
百合はいかにして育つかを思え 労めず紡がざるなり。
我汝等に告げん。
ソロモンの栄華極みの時だにも
其装いこの花の一つに及ばざりき。(路加伝第十二章二十七節)
我汝等に告げん。
ソロモンの栄華極みの時だにも
其装いこの花の一つに及ばざりき。(路加伝第十二章二十七節)