自滅型天才

最初から、ジャズが好きで聴いてたわけでもない。

その当時のジャズ喫茶。珈琲一杯の値段は普通に喫茶店より高かったが、何時間でも居続けることが出来

たから、寄る辺ない者には都合が良かったのだ。

門前の小僧よろしく耳に入ってくる音に、それなりに関心を持つようになった。

ようするに、ジャズが好きになった。素直な話をするとジャズと出会うことがなければ、もっと寂しい人

間になってる気もする。

ちょうど、フリー、フリーと草木もなびく頃の話。


関係ないけど、横山やすしが好きだ。

横山やすしは天才で破滅型芸人とされる。

天才と破滅は芸人やミュージシャンへのほめ言葉の基本だ。

梅に鶯、松に鶴、朝吉に清二(映画「悪名」)みたいなもんだ。


グーグルで「ジャズ 破滅型」として検索してみた。

チェット・ベイカー
チャーリー・パーカー
バド・パウエル
ビリー・ホリディ
アート・ペッパー
アルバート・アイラー
ジャコ・パストリアス・・・・・・次々と出てくる。

どれもこれも好きなジャズメンだ。

例えば、ジャコ・パストリアスアルバート・アイラーはほぼ自分と同時進行だったから、よけいに気持

ちが入ってくる。


中山康樹に『スイングジャーナル青春録~大阪編・東京編』がある。

ん?自分も知ってるジャズ喫茶が出てくる。マイルスが大阪にやって来たときのフェスティバル・ホール

の熱気もよくわかる。同い年だった。多分、どっかで交差している。


中山康樹も最近は『ジャズ構造改革 ~熱血トリオ座談会』なんて本で、かなりオッサン化してしまってい

る。CD(レコード)+ジャズ喫茶+雑誌というジャズ評論家を支えている要素が溶けかかっているか

ら、焦りもわからんでもないが、この座談会はひどすぎた。


しかし、その話は置いといて、例えばジャコ・パストリアス

その中山康樹の『スイングジャーナル青春録~東京編』に、ボロボロになったジャコがニューヨークに滞

在している中山の所にやってくる話がある。

新しいバンドでレコーディングの準備中などといいつつ、金をせびりに来る。その金は何のこともない、

ただクスリ代に消えるだけなんだが。

ウェザー・リポートでの「バートランド」をはじめとして、ジャコ・パストリアスが聴く者の腰を次から

次へと抜かせて来た過去を知ってるだけに、このエピソードは辛いものがある。

ジャコもアイラーもロクな死に方はしてない。横山のやっさんも失意のうちに亡くなった。

みんな才能のある人ばっかりだ。

しかし、みんながみんな破滅型天才ではない。


これ、自滅ちゃうんかい!と言いたくなる人もいる。


自滅型天才という言い方があってもいいと思ったりする。


しかし、暑い。