Albert Ayler

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『破壊せよとアイラーは言った』なんて本を中上健次が出したりしている。

そんなこともあってか、アルバート・アイラーはジャズの破壊王みたいなイメージで語られることが多

いような気もする。

私がジャズ喫茶に入り浸っていた頃は、ジャズがフリー、フリーと草木もなびくという時代だったので

アイラーはしょっちゅう耳に入っていた。

・・・関係ないが、ジャズが好きでジャズ喫茶に入り浸っていたわけではない。そこは何時間でも居る
   ことが出来たという理由が先に来ている。門前の小僧の例えとはすこし違うかも知れないが、耳
   に入ってくる内に、ジャズが好きになったのだ。

「Spiritual Unity」や「Ghost(Vibrations)」と聴いてはいたが、正面にアイラーを置くというほど

でもなかった。

そんなある日、イソノてるお司会のラジオから流れたアイラーの「ロリンズ・チューン」。そこからア

イラー追っかけが始まったと覚えている。

具体的には、アイラーの昔を聴いて凄いと思ったから、時系列で昔から今へと聴き進んだわけだ。

・・・イソノてるおは、サザエさん一家とは何の関係もないのです。

そんな流れで聴いてきたので、アイラーが破壊王とは全く思えないのだ。むしろ、忠実にジャズの流れ

を踏襲して、その上で<今>のスタイルを演じているように思ったのだ。

たしかに、昔から調子っぱずれなサックスではあるが、それはジャズメンなら誰にでもある演奏スタイ

ルであって、何かを破壊するためのスタイルとは思えないという事だ。

むしろ、アイラーを聴いた後に来るのは、ある種のおおらかさのようなものだ。

『破壊せよとアイラーは言った』というのは中上健次のアイラーであって、アイラーは、破壊せよとは

一言も言っていない。そんなふうに思う。


1970年11月25日。

アイラーは、ニューヨークのイースト・リヴァーで死体となって発見された。享年34才。

自殺か他殺、事故死さえ明らかにされていない。

よくはわからないで書くが、アイラーには一曲三分程度の曲を収録し、サイケディリックなジャケット

ととも売り出したアルバムがあったりする。そんなのを見ていると、アイラーは、実生活ではけっこう

騙されやすい人であったのかも知れないと思ったりする。


再び「summertime」。

グランド・グリーンのところで「summertime」のことを書いた。

私がいちばん印象に残る「summertime」がアイラーの演奏によるものだ。

輸入版で買ったのだけど、異常に高かった。

髪を腰辺りまで伸ばした中島らもと友達が、いきなり若い兄ちゃんに「おまえ、なんぞい」と言われな

がら殴られたという東梅田商店街の「イージー・ライダー事件」の起こった(私が言ってるだけです)

東梅田商店街の「LPコーナー」で買った。

ジャズを聴かないアホ友達に聴かしたら、「レコードの回転数がおかしい?とか「楽器自体がおかしい

?」とか、どちらにせよ、その楽器がテナー・サックスであることさえ気付かない。そんな反応だった

ことを覚えている。

アイラーの「summertime」。大西巨人ふうに言えば、その音はけっして俗情と結託しない音であります。


そんな話でした。