『日本人への遺書』 と 『仁義なき戦い』

天本英世は2003年に亡くなっている。

その灰の一部は希望通りアンダルシアの川に流されたという。

その天本英世に『日本人への遺書(メメント)』がある。

そうそう、私は天本英世が大好きです。


天本は苦労し努力して「非国民」となった人だ。

『日本人への遺書』には、この辺りの「私は非国民でけっこう」とか「乞食になるつもりで俳優になっ

た」といういきさつと、彼が愛したスペインが書かれている。


その天本英世が「ぼくなんかは60歳になってやっと【非国民】になれたが飯干は20歳ですでに【非国民】

だった」と評価するのが飯干晃一だ。

なんでも、飯干晃一は英語が抜群に出来て英語のラジオ放送を聴いており、日本軍が負けていて大本営

デタラメを言っている事を充分に知っていたらしい。

二人は「戦争には行きたくない、しかし、理科系にはもっと行きたくない」そういう連中が集まった、旧

制七高(鹿児島)の文系の同級生だ。


飯干晃一といえば『仁義なき戦い』であり、娘の飯干景子は正しい阪神ファンだ。これは関係なかった。

仁義なき戦い』はヤクザの物語だ。

このヒット作のサブタイトルは「美能組元組長美能幸三の手記より」。

つまり原作が美能であり、飯星は美能の手記を元にしたノンフィクションということになる。

飯星によれば美能の手記は次の一行で、唐突に終わっているらしい。


  つまらん連中が上に立ったから、下の者が苦労し、流血を重ねたのである。


ところで、「非国民」飯干がテーマとして「やくざ」を取り上げた理由はこんな所にあるように思う。

以下『やくざと日本人』猪野健治より引用。


権力の意志によって自在に動かし得る集団を体制内順応集団と呼ぶなら、親分の意志によってしか動かな

い無頼集団は明らかにその圏外の存在である。

親分子分の無頼集団は、腕力、統率力、経済力、知識、洞察力、人望、社交性その他の優劣によって血盟

した人間の支配関係であるが、そこに加盟する分子は、生まれながらにして当該集団に組み込まれたわけ

ではなく、自己の意志によって加盟するか、または自己に属する階級から落伍して、生きる拠りどころを

求めて流入した窮民たちである。かくてその加盟者は、体制内での生活スペースを失った階級底部の出身

層が主流になる。・・・親分子分の無頼集団は、階級底部の出身層で構成されているが故に、その違法性

の内側に反体制集団の機能を内蔵してきたのである。


●『やくざと日本人』→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8C%AA%E9%87%8E%E5%81%A5%E6%B2%BB

天本英世http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%9C%AC%E8%8B%B1%E4%B8%96

●飯星晃一→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%B9%B2%E6%99%83%E4%B8%80