書名で買った本のこと

 
装丁は本の中で重要な要素だけど、全部の本が書店で平積になっているわけもない。書店でも、図書館で

も基本は棚差しだ。

そうなると背表紙と書名の勝負になる。


むかし、岩波文庫の福田英子の『妾の半生涯』を「メカケの半生涯」と勘違いして、これは絶対にヤラシ

イ本やと思い込んで買って帰ったアホ中学生もいた。誰とは言わんけど。

そんなわけで、書名に惹かれて買ったり借りたりする事はいまでもある。


この書名ということで、真っ先に頭に浮かんでくるのが一冊ある。

思い出せばもっとあるんだろうけど、いつでも真っ先に浮かぶのがこれだ。

『頭の中がカユいんだ』。

中島らもとの出会いだ。

その頃、私は頭の中がとてもカユかったのだ。いまでも時々カユかったりするけども。

「そやなぁ、カユいもんなぁ。うんうん」とうなづきながら買った覚えがる。

こんなことを書いてたりする。

 酒も煙草もやらずに、毎日五キロのジョギングやってますという人はたくさんいるだろう。

 ジョギングをしていると、段々に陶酔状態になってくる。「ランナーズ・ハイ」というのだが、

 これは脳中にモルヒネに構造の酷似した成分が作り出されるからなのだ。

 ジョギングなどは靴が減ります、と言って貯金通帳の数字をひたすら眺め続けている奴もいる。

 「一日一善」に固執する奴の精神構造というのも、完全に中毒者のそれだ。

 要するにみんなラリってる。

 ラリってる中で一番たちの悪いのは思想と宗教にラリっている奴だろう。

 ああいうのは僕はこわい。目がすわっている。

 睡眠薬の方がまだずっとマシだ。自分がラリっているのがわかっているからだ。

 結局、人間はどっかにポッカリとばかでかい穴があいているのだ。

                             -『頭の中がカユいんだ』より



 ・・・年譜やなんやかやと網羅してはります。

●福田英子Wikipediahttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E7%94%B0%E8%8B%B1%E5%AD%90
 
 ・・・『妾の半生涯』は当然ですけど、ワラワの半生涯です。青空文庫で読めるみたいです。