中国から来ました
ある日のことである。 駅の近くで私は中年の男性に頭のテッペンから足の先までじろじろと食い入るような目で見られ 品定めされた。 「自衛隊に入りまへんか」 「すみません。私は中国から来ました」 「中国地方でっか?」 私が驚いたのはいうまでもない。とてつもなく大きな驚きを経験した日であった。 しかし、よく考えてみれば、その中年男性は私のことをてっきり日本人だと思い込んでいたのだ。 -『「ちょっと」はちょっと…―ポン・フェイ博士の日本語の不思議』(講談社・1994年)より。
先だって「そんな奴はおれんやろ~」で、紹介した、ポン・フェイ(彭飛)先生。
「キツネうどん」ってキツネの肉が入ってると思った人だ。
その話は『大阪ことばの特徴』(和泉書院・1993)に書いてた話。
図書館の「日本語コーナー」に、もう一冊あったのが、この『「ちょっと」はちょっと』。
なんでも、先生は、大阪市立大学文学部で外国人として初の博士号を取得らしい。
でも、そんなことより、この人の、はじめての日本語が大阪語圏だったのが気になる。
上のような書き出しの通り、しっかりと「つかみ」を意識して書いている。
まるで、「中国は広島生まれよ」のゼンジー・北京みたいなフリや。
おそらく、大阪以外に留学したとすれば、こんな文章を書く人にはならなかった気がする。
で、おまけで、ポン・フェイ先生が翻訳不可能とした「ちょっと」の用例を。
①ちょっとないですわ
②あの人はちょっと
③ちょっとお先に
④ちょっとお茶でも
⑤値段もちょっとしたもの
⑥ちょっと冗談じゃない
こんな具合です。
阪ことばと中国語』という自著をアチャコチャに贈呈してきたような、ケッタイな人です。
ところで、「ちょっと」に似た大阪弁があります。
「ぼちぼち」です。
「ぼちぼち行こか」
と
「ぼちぼち、行こか」
では、えらい違いがあります。
・・・「ぼちぼち」の発音は「ボチボチ」です。「ボチボチ」=「墓地墓地」のようには発音しないです。
そんだけ。