き お く

 
わけわからんほど 酒飲んでも


目が覚めると 家だったりすることの方が多い


昨日の記憶を呼び戻そうとして しわしわのズボンの両ポケットをさぐる


ポケットいっぱいのジャラ銭と クシャクシャの千円札が 悲しかったりする


我を忘れるほど飲んでも同じことか!


口惜しさで 天井がまわる



婆さんが死んでから 爺さんを車椅子で散歩に連れて行くのが日課となった


少し前にも書いたけど ( 『忘れていくということ』 )  爺さんはますますという状態になっている


でもごくふつうに 食って 出して 寝ている


たしかにそのやり方は 今の人間のルールからは外れてるかも知らん 


けど生き物としては間違ってもいない



この頃の爺さんの口癖は 「忘れた」 でなく 「わからん」だ


思うけど 爺さんは忘れていってるのでなく 消していってる気がする


生まれたときから積み上げてきた 記憶を消しているのだ


腐るほど酔っ払っても 家に帰ることもない為の作業をやっている気がする


それは 私がそうしたいと いつも心に思っていること


だから とてもうらやましいし 天晴れな気がする



爺さん あんたが私のことを忘れても こっちが覚えてるから安心して消していったらええ




記憶から解放されんと 人は自由にはなれんような気がする





そんだけ