添田のバカヤロー

 
人に会うため梅田に出た。

帰り、例によって古本屋を覗いてみる。

この頃は、街に出てオネイサンを追っかける元気はない。

まてよ、むかしから追っかけても捕まえたこともないなぁ。

むしろ、罠にかかって悲しい目にあったことの方が多い気もする。


今日は、芸能をメインとしている店に入った。いつまでおっても退屈せん。

添田知道の『日本春歌考』が6000円やった。

高いとは思わんかったけど、買える値段ではなかった。

同じく、添田知道の『香具師の生活』は1000円。

これは買える値段やったけど、買わんかった。

手元に置いておきたい本は限られているのだ。


添田知道は、父親の唖然坊が辻潤と交流があった事もあり、小さい頃から辻を見知った人間だったが、後

に知道自身も辻潤と交流する。

年長者は殴らないを自らのテーゼとする添田が、ギリギリの行為として、辻潤の胸ぐらを掴んだことがあ

る。添田知道が馬込に住んでた頃の話だ。

その時の辻潤の心が、私にはまだ見えないので詳しいいきさつは書かないけど。

それ以後、辻潤は「添田のバカヤロー」と添田の家を通るたびに大声を上げていたそうだ。

ある時、辻が添田の家で門付けをやってた時、添田もいくらかの金を渡そうと思って立ち上がると、尺八

がとまり「添田のバカヤロー」と言って去っていったらしい。


添田知道は、辻潤から「無用の有用を教えてもらった」とそんな事を書いている。


1964年、『本の手帖』辻潤特集号に掲載された添田知道「感想以前のこと」

以前、一部を引用しているので<再上映>しておきます。


そんだけ。