辻潤の翻訳本・・・何となく辻潤という人が
辻潤の主な翻訳本。
『天才論』ロンブローゾ。
『阿片溺愛者の告白』デ・クインシイ。
『響影(狂楽人日記)』スタンレイ・マッコウア。
『ド・ブロフォンデス(獄中記)』オスカー・ワイルド。
『自我教』スチルネル。
『一青年の告白』ジョウジ・ムウア。
稲垣足穂は『天才論』を愛読し「これは俺の事を書いている」と思ったらしいが、周囲の友人も「これは
俺の事を書いている。次のページをめくるのが怖い」と言っていたという。
実は私も、自分と当てはまる部分をかなり懸命になって探した覚えがあるのです。
晩年に辻は、A・キャノヴィッチの『美への意志』を完訳したが、戦時下で未完のまま終わっている。
この『美への意志』の副題は「ショウペンハウエルとニイチェ哲学の継続」。
そして、最後に翻訳として行った仕事は『唯一者とその所有(自我教)』の誤訳訂正であり、気仙沼の菅
『美への意志』の訳と『唯一者とその所有』の手直しで終わっているという事だ。
辻潤は、本物のスチネリアンというか、自分の血肉とならないものには手を出さなかった人だろう。
「即身成仏―とは自己を"as such"として単純に認識することである。一切の理想をかなぐり棄てた状態
である」(ふらぐまん・でざすとれ)。
こういう人であり、上の言葉そのままをやった人かも知れない人と思っております。
余談ですが、その『唯一者とその所有』の著者、マックス・シュティルナー。
晩年は借金のため2度留置場にいれられたりして、最後にたどり着いたアパートの女主人と一緒に生活
し、50歳の時の5月に毒虫に首を刺されそれが原因で死んだとされている。『シュティルナーの思想と
生涯』大沢正道から。