『河内風土記』
「御住(オジュ)ッさん。帰ってはりましたのか」
天台院の檀家ではないが、檀家の親類に当たる豚毛ブローカーのパア太が玄関から声をかけた。
住職は本尊脇に掛けた下手糞な観音像の絵をながめていた。
「う。居るで。今、逮夜参りからの戻りやがな」
「お暇だっか」
「御らんの通り毎日暇や。何の用やねん」
いつものように、近所の古本屋で百円で買った。
1960年4月初版で『小説新潮』に連載されたとある。定価270円です。
出だしからやっぱり上手いなぁと思う。
「豚毛ブローカーのパア太」がいきなり登場するから、八尾を舞台とした小説とすぐわかる。
八尾は今でも歯ブラシの生産量日本一であり、「豚毛」は歯ブラシに使われているのだ。
梅に鶯、松に鶴、朝吉に清次の名コンビだ。
小説では、八尾の朝吉は元からの博打打ちではなくて、そうした歯ブラシ工場で働く人間と設定されてい
た記憶がある。
ようするに、半年間の重労働で得た金を残りの半年で使い切ってしまうようなおとこ達の一人として描か
れていたように思う。
原作の『悪名』を読んだかどうかの記憶が曖昧だ。
こんど見つけてきて読もう。
そんなんです。
●悪名『八尾の朝吉』→http://park16.wakwak.com/~yao/akumyou.html